世界でいちばん悲しい歌

私は、世界で一番悲しい歌は「ドナドナ」だと確信している。
そして、その悲しさを一番発揮できるのは、プロや合唱団でもなんでもない、ただの小学生(こんな言い方はおかしいけれど、「ただ」な人はいないからね)が音楽の授業でこの曲を歌うときなのだとも確信している。

「ドナドナ」の日本語の歌詞は安井かずみさん作の

ある晴れた 昼さがり いちばへ 続く道
 荷馬車が ゴトゴト 子牛を 乗せてゆく
 かわいい子牛 売られて行くよ
 悲しそうなひとみで 見ているよ
 ドナ ドナ ドナ ドナ 子牛を 乗せて
 ドナ ドナ ドナ ドナ 荷馬車が ゆれる

 青い空 そよぐ風 つばめが 飛びかう
 荷馬車が いちばへ 子牛を 乗せて行く
 もしもつばさが あったならば
 楽しい牧場に 帰れるものを
 ドナ ドナ ドナ ドナ 子牛を 乗せて
 ドナ ドナ ドナ ドナ 荷馬車が ゆれる

が一番メジャーなものであるが、どうだろう、この歌詞。子牛は売られてゆくけど、自分は何もできない。悲しそうな瞳で子牛は自分をみているのに、自分は何もできない。この「かーわいいー子牛」のところは突然音程があがり、歌う小学生の声はかすれるので、そのやるせなさ・哀愁はより一層助長される。

wikipediaをみると、なんでも「ドナドナ」はナチスによって収容所に送られるユダヤ人のことを歌ったものだという説があるらしい。
「ドナドナ」を聴いて感じるあの不条理は、確かに私たちがホロコーストについての考える時に感じるそれに似ている。