sabio

わたしが小学校にあがったころ、絆創膏は「ばんそうこう」、「バンドエイド」もしくは「カットバン」だった。それは肌色というより薄茶色のもので、貼ったときできるだけ目立たないようにつくってあるぶん、不恰好で、色気もなにもなかった。
そしてそれはまた、毎日のように狭いところに潜り込んだり木登りをしては、傷をつくっていた当時のわたしにとって、トイレットペーパーや綿棒とおなじ、ただの消耗品にすぎなかった。


小学校2年生のとき友達になったアスミちゃんの持ち物はなんでも素敵だった。
彼女には歳上のお姉さんとお兄さんがいて、小学校低学年女子としては、すごく洗練されていたのだ。
なかでも私にとって一番の衝撃だったのは彼女のもつ「サビオ」だった。
それは色鮮やかでキャラクターのイラストが描いてある、それまでわたしがみたこともないタイプの絆創膏だった。
そして彼女はそれを「ばんそうこう」や「キズバン」ではなく、「サビオ」と呼んだ。
その響きとその見た目はすごくマッチしていて、ハイカラな感じがした。わたしもこんなのが欲しいと思った。


今日、紙で切ってしまった指に絆創膏をまきながら、そんなことを思い出した。
アスミちゃんが、いちどだけわたしにくれた、水色地で青いリボンをクビにまいた白いテディベアがかかれた「サビオ」。
それから15年程たった今も、わたしは彼女以外に絆創膏を「サビオ」と呼ぶひとに出会ったことがない。
どうやらそれは商品名のようで、それを絆創膏の通称名として使用している人がこの日本には少なからずいるようだ。
けれどそのサビオも2002年に製造中止になってしまったとか。
アスミちゃんは、まだ「サビオ」を使っているのかなぁ。